発達障害の子の暴言を減らす5つのポイント
株式会社フロンティアコンサルティング 代表取締役
上岡 正明 (かみおか まさあき)
大学院にてMBA(情報工学博士前期課程)取得。専門分野は社会心理、小児心理。多摩大学、成蹊大学、帝塚山大学で客員講師等を歴任。子どもの脳の発育と行動心理に基づく研究セミナーは常に人気を博している。著者に『死ぬほど読めて忘れない高速読書』(アスコム)、『脳科学者が教える コスパ最強! 勉強法』(ぶんか社)、などベストセラー多数。中国や台湾、韓国でも翻訳され累計85万部となっている。 Twitterフォロアー5万人、YouTubeチャンネル登録者23万人を超える教育系ユーチューバーでもある。
> 監修者の詳細はこちらこの記事では発達障害のお子さんの暴言や悪口を減らす方法などについてお伝えしていきます。
「ときどき信じられないような暴言を言うので困っている」「口が悪いので何とかしたい」と悩んでいる方は少なくないと思います。
そこで本記事では、お子さんに暴言・悪口が多いことのデメリットや悪影響、暴言・悪口を減らすための方法などに関して解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
発達障害のお子さんに悪口・暴言が多いことのデメリットや悪影響3つ
まずは発達障害のお子さんに悪口・暴言が多いことによる主なデメリットや悪影響を紹介していきます。「悪口・暴言は良くない」と誰しも知っているはずですが、具体的なデメリットを知っておくとお子さんを指導しやすくなるかもしれません。
1:周囲からの評判が悪くなる・嫌われる
当然ですが悪口・暴言が多いと周囲からの評判が悪くなりますし、嫌われる可能性も高いです。特に周囲に発達障害であると明かしている場合は、「やっぱり発達障害だから」などと色眼鏡で見られてしまう恐れもあります。
また、Aさんに対して直接悪口・暴言を言っているわけではなくても、「この人はよく悪口・暴言を言っている」ということが伝わってしまえば、Aさんにも「私の悪口も言っているかもしれない」「人を悪く言う人は信用できない」などと思われて嫌われるかもしれません。
さらに言うと学校の先生にも良く思われなくなるケースがあります。学校の先生は子どもを指導するプロですが、一人の人間であることに変わりはありませんから、あまりに悪口・暴言が多い子どもに対してはうんざりするかもしれません。
2:悪口に依存してしまう
誰かの悪口を言うと脳内物質の一種であるドーパミンが多く分泌されると言われています。ドーパミンはモチベーションや快感に関係する神経伝達物質ですから、悪口を言っているとどんどん依存していってしまうかもしれないのです。
本人が「悪口・暴言を言うと嫌われるかもしれない」「悪口・暴言を言っても自分のためにならない」と理解していても、ドーパミンによる快楽に負けてしまって悪口を言う場合があるということですね。
3:身体にも悪い
悪口・暴言を言うとドーパミンだけでなく、コルチゾールというストレスホルモンも放出されると言われています。ストレスは当然身体に悪影響を及ぼしますし、病気を引き起こす可能性さえあります。
ちなみに悪口・暴言とは少し違いますが、「世間や他人を批判的に捉える人」はそうでない人に比べて、認知症になるリスクが3倍高いというデータもあります。
発達障害のお子さんの悪口・暴言を減らすためのポイント・注意点5選
それでは発達障害のお子さんの暴言を減らすための対策をいくつか紹介していきます。「悪口・暴言はダメ!」と頭ごなしに言ったり強制したりするのではなく、穏やかに戦略を練って教えることが大事です。
1:お子さんと一緒に「言ってはいけない言葉リスト」を作ってみる
お子さんと一緒に「言ってはいけない言葉リスト」を作ってみることをおすすめします(例えば「暴言リスト」という名前は攻撃的ですのでおすすめしません)。
「どんな言葉を言ってはいけないと思う?」ではなく、「どんな言葉を言われると嫌かな?」→「○○とか」→「じゃあ○○は言わないようにしようね」という流れで作ると効果的です。そうすることで「自分がされて嫌なことは、人にもしない」という感覚が身に付きます。
「言ってはいけない言葉リスト」が完成したら(必要に応じて言葉を足していくべきです)、お子さんに渡したり部屋の壁に貼ったりしておきましょう。ただ、嫌な言葉をずっと目にしていると気が滅入るかもしれませんから、様子を見ながら行ってくださいね。
2:「絶対に言ってはいけない」というレベルの対応はしない
「○○なんて言葉は絶対に言っちゃダメ!」「禁止ワードだよ!」などの方針を取るのはおすすめしません。なぜならお子さんがその言葉を言ってしまった際に「こんな言葉を言う自分はなんてダメなんだ」と自分自身を否定してしまう可能性があるためです。
嫌なことがあれば悪口を言ったり悪態をついたりしたくなるはずであり、それ自体を禁忌扱いするべきではありません。状況にもよりますが「面と向かって悪口を言われたら立ち向かうべき」「一人でいるときは暴言でスッキリするべき」という考え方もあるはずです。
ただ、繊細なことですので「悪口を言われたら立ち向かう」などの教育は、お子さんがある程度成長するまではしない方が無難です(家庭ごとの方針にもよります)。
3:「頭の中で考えるのはOK」にする
「暴言を言ってはいけません」とだけ伝えてもお子さんにとって窮屈になりやすいため、「口に出して言うのはダメ」「ただし頭の中で考えるのはOK」と教えることをおすすめします。
実際、(どのような表情をするかにもよりますが)口に出さなければ相手には伝わりませんから、頭の中に留めることは、「ずるいこと」ではなく「相手への思いやり」とも言えるはずです。
4:親も暴言や悪口を言わないようにする
意外と少なくないのが「親も暴言や悪口を言うことが多い」「お子さんがそれを真似してしまう」というパターンです。ご自身で気付いていなくても、口癖のレベルで(暴言・悪口ではなくても)、本来子どもに聞かせるべきではない表現を使っているかもしれません。
また、具体的な言葉ではなくても「○○だろーが」「○○しろよ!」など乱暴な口調で喋ってしまっている方もいると思いますので、こちらも併せて確認しましょう。
配偶者などとお互いにチェックし合ったり、ボイスレコーダーを一日自分に対してセットしたりして調べてみるのがおすすめです。この際、「この声がけは良かった」「この表現は子ども対してわかりやすい」などポジティブな言葉にも目を向けられるといいですね。
5:悪口・暴言ではなく「感情」「感覚」を言えるようにする
発達障害でなくても少し嫌なことがあると、悪口・暴言が口をついて出る人が少なくありません。そして悪口・暴言を封じ込め過ぎるとストレスが溜まりますから、悪口・暴言ではなく「感情」「感覚」を言えるように教えてみてはいかがでしょうか。例えば以下の通りです。
- 壁に身体をぶつけた→暴言ではなく「痛い!」と言う
- 宿題がたくさんある→暴言ではなく「面倒だなあ!」と言う
- 友達とケンカをした→悪口ではなく「ケンカしちゃって悲しい!」と言う
これによってストレスを発散しつつも悪口・暴言を避けることができます。ただ、発達障害であってもなくても、大人にとってもやや高度なスキルですから、お子さんがある程度成長してから「こういうやり方もあるよ」くらいのスタンスで教えることをおすすめします。
まとめ
発達障害であってもなくても「悪口・暴言を頭の中で思ってもいけない」という教え方をすると窮屈になりますから、「悪口・暴言を頭の中で留めることができたら十分偉い」というスタンスで指導することをおすすめします。
人間である以上、場合によっては悪態をつきたくなるのが当たり前ということを忘れないようにしましょう。これは親御さん自身にも言えることですから、保護者の方もあまり溜め込まないようにしてくださいね。